カウンターの向こうで笑顔で次々に来るお客さんに笑顔を振りまいている君を、僕はさっき頼んだばかりのストロベリーシェイクを吸い込みながら盗み見ていた。


そっとレシートの裏にアドレスを書いて君に渡して見たら…
なんて想像しながら、そんなこと僕ができるはずがないと小さく頭を左右に振ってストローを強く噛み潰した。


「お先に失礼しまーす!」


そうこうしているうちに、彼女は笑顔を他の社員の人に向けてそそくさと事務所に戻って行ってしまった。
その後ろ姿を見送ると僕はいつも通りにシェイクの無くなった紙コップを握りしめてゴミ箱に押し込み、店員さんの「ありがとうございましたー!またお越し下さいませー!」という、必要以上に大きい声に押し出される様に店を後にした。


僕は、半年くらい前に、部活の後この店に入り、カウンターに立つ彼女を見て以来、部活の帰り道にいつも店を覗き込み、彼女が働いている姿を確認できると必ずストロベリーシェイクを買っている。

この冬にストロベリーシェイクを買うのは、最初に来たのが夏場で、ストロベリーシェイクを買ったのでその後も毎日買うことで“毎日夜にストロベリーシェイクを買っていく男子学生。”という位置で彼女の頭に残れるかもしれない。という僕なりの考えがあったからだ。

彼女がカウンターに立つと、パッと花が咲いた様にキラキラ輝く笑顔が咲く。それは、作り物の笑顔ではなく、本当に楽しそうに笑っていて、部活で疲れ切った僕の心を癒してくれるんだ。


要するに僕は、
彼女に一目惚れをしたんだ。