「いーからいーから、たっくんまたあとでねん」
教室の窓側の席から聞こえる声のほうに目を向ける。
にたにた笑ってる明るい子と、嫌そうな顔をしてるたっくんと呼ばれる子。
…さっき、体育館で見た子や。
この距離でみるとさらにかっこいい。
「まっつー、ばいばーいっ」
「おっ、またなー」
あたしらの前を通り過ぎる、明るい子に声をかける女子たち。
それに白い歯をみせて笑う彼はかっこよく、モテるんやろなー。て思った。
「今のがな、うちのクラスのムードメーカーで松井 健太っていうねん。愛称は、マツとかまっつーとか。女子にも男子にも下の名前では絶対呼ばせへんねんな。」
「そうそう!彼女の特権とか言ってさ。ほんま溺愛やんなー。」
『羨ましいわー。』
てきゃーきゃー言ってる姿はいかにも女子高生って感じで、以前まで男子高にいたあたしには新鮮だった。
「あ、そんでー。そのまっつーと一番の仲良しなのが清野拓人。あれあれ。学年で一番のイケメン。」
「顔も頭も運動神経もいいねんけど。愛想がちょっと…なー?」
「男子とはそこそこ話すけど、女子と話すことはあんまないよな。なんやろ、高嶺の花的なー?」
『高嶺の花って女子かいっ』
きゃははははと大きな声で笑う彼女たちにつられて、私も笑顔になる。

