「なんであんなことしたん?」



『好きやから』


そう喉まででた言葉を必死で飲み込む。



「あかんかった?」

「…いや、そのあかんとかあかんくないとかやなくて…いや、あかんのか。…えと、いや…そういうことやなくて…」



明らかに同様してるのが伝わる。


何回『いや』いうねん。


どんだけ可愛いねん。


俺をどうする気?


わかってんの?


ほらまたそんな顔してさ…



「あたし…先生やから…」



それはまるで自分に言い聞かせてるようで。



「だから?」

「清野くんは、生徒やん…」



そやで
だからなんなん?


先生が抱きしめられるようなことしたんやろ?



「………」



何も言わなくなった先生。


俺からも何も言えない。


ここで気持ちを伝えるのは、まだ早い。


先生を困らせるだけや。



「じゃ、俺帰るわ。また明日な。」



返事はなかった。


変わりに聞こえたのは、小さなため息だった。