「ちょ、なんで無視すんねん。」
「離して。」
掴まれた右腕が痛い。
キッと睨むが、彼にはなんの効果もないようなので、左手でむりやり引き離す。
「なんなん?何か用?」
「そんな怖い顔すんなて。昨日は、普通やったやん。」
ヘラヘラ笑う顔がむかつく。
昔のまんまのそれは、懐かしさを感じさせた。
「昨日は、送っていただきありがとうございました。」
「ほんま酒弱いよなー。てかさ、これから飯でも行かん?こんなとこでたちばなしもあれやし。」
「行かん。話すことないし。それじゃ。」
それだけ言い残して、早足でその場を去った。
なんでわざわざ会いにきたんやろ。
なにをしたいんか、なにを考えてるんか全くわからん。
たしか昔からそうやった。
付き合ってるころも、彼がなにを考えてるのかさっぱりでよく私が勝手に怒ってた。
自宅まであと百数メートルというところで、携帯が震える。