…いや、嬉しかった。というと少々語弊があるな。


そんな表情をさせることができて、またそんな表情を知ってるのは自分だけだと思うと愛おしく感じた。


もちろん他にも知ってる人もいるかもしれないが、今この瞬間に俺は優越感を感じていたのかもしれない。


柴原先生のことがあったから余計に。



『もう怒ってないん?』



小さな声でこちらを伺ってくる様子が伝わってくる。


きっと今度は、眉を下げて少し不安げな表情をしているのだろう。



「怒ってへん。ちょっと子供すぎたな。って反省した。」

『私のほうこそごめんな。ほんまごめん。

せやけど、なんか嬉しいな。たっくんヤキモチやいてくれたんやろ?なんか意外。』



クスッと笑う彼女の声のトーンは上がっていた。



「今日、夜また電話するな。」

『うん。待ってる。じゃあ、またな。』



ごめん。の一言で、さっきまでとは気分が違う。


どんより沈んでいた心が、晴れた。


今は、もう夜の電話が待ち遠しくてしょうがない。


それにしても初めての自分の嫉妬心に驚いた。


これからはほどほどにせんとな。