「サナ?
戻ってたんだね」
景さんのiPhoneを見つめたまま固まっている私に、
いつの間にか帰って来た景さんが、穏やかな調子で言った。
「ヒカリさん……」
「どうしたの?
何か あった?」
景さんは、私の視線の先に あるiPhoneに目を向けて、
″電話でも あったの?″というように、訊いてきた。
「ああっ、あの…、電話が、ありました…!」
慌てて そう言うと、景さんはiPhoneを手に取った。
「…そう。
ありがと」
「あ、あの!
ヒカリさんっ!!」
「…何?」
「いえ、何でも…。
…あ、いえ!
あの、やっぱり…」
歯切れの悪い私に、景さんはイライラする素振りも見せず、笑って言った。
「何、どうした?
怒らないから、言ってみて 笑」
「あの……」
「ん?」
「あの、私…。
ヒカリさんの携帯に、
誰から電話が掛かってきたのか、見てしまいました…
…ごめんなさい」
「そんなの、別に いいよ」
本当にスタッフの事を信頼してくれているのか、
景さんは笑いながら言った。
…確かに、景さんに やましい電話が掛かって来た事は、
私の知る限り、今までに1度も ない。
景さんは正直な人だから、
実際にも、やましい事なんて ないと、思う。
だから さっきの電話だって、
景さんに ちゃんと訊けば、納得できる答えが、返ってくる筈…。
「…何、どしたの?
まだ何か、あるとか?笑」
また黙り込んだ私の顔を覗き込んで、景さんが言った。
…私は覚悟を決めて、切り出した。
「………電話…」
「うん?」
「……病院からでした。
名前からして、…そこの…、総合病院だと思います」
「……そう」
景さんは驚いた様子も なく、普通に返事した。
でも私には それが、納得できなかった。

