「そろそろ帰ろっか」
あなたが独り言のように、小さく呟いた。
「うん、帰ろ」
私は しっかり あなたに向かって言って、
導くように あなたの手を そっと引いた。
あなたは喜んで先を走る犬に付いて行くみたいに、
私の後ろを歩く。
…何も言わない。
あなたは いつでも、何でも受け入れて、合わせてくれる。
…あなたの そんな所も、好き。
「…ねぇ、何処 行くの?」
その時、
家とは違う方向に歩く私に、あなたは不思議そうに口を開いた。
″あなたと ずっと一緒に居られる所″。
本当は そう言いたかった けれど、言わなかった。
「…今日は いつもと違う道、通って帰るの」
誤魔化すように そう言うと、
あなたは″ふーん″って言って、また穏やかに、微笑った。

