「これ…、どう思う?」




ヘッドフォンを外した私に、景さんが ゆっくり煙を吐き出しながら、言った。






「どう って……。


…難しい事 訊きますね」




「そう?笑


何でも、サナが思った事、そのまま言ってくれて いいよ」






景さんの曲には、″景さん″っていう人が、よく表れている。


毎回 新しい挑戦を していて、どれも全然 違う曲なのに、

どの曲にも景さんの″色″が、良くも悪くも出ている感じ。


私は好きだけれど……、

それを言ったら、景さんが喜んでくれるのか怒るのか分からないから、言えない。






「えっと、

すごく いい、と思います…」




結局そんな ありきたりな事しか言えなくて小さくなる私に、

景さんは優しく微笑った。






「…そ?


ありがとね」






…景さんは、優しい。


ステージで見る、ヴィジュアル系バンドのヴォーカルとしての景さんは、

普段とは全く違う、俺様なイメージだけれど。


ステージを降りた景さんは すごく穏やかで、

何と言うか…癒し系のオーラが、出てる。






「あの……、

でも私、ほんと好きです!


景さんの曲…」




「あー…、ありがと 笑」






「具体的な感想とか、ほんと上手く言えなくて…

でもっ」




「…分かった分かった 笑


ありがとう。




また新しいの出来たら、聴いて貰うから。


そん時は、よろしくね」




柔らかい笑顔で、景さんが言った。






……景さんは、ずるい。


こんな私でも、必要としてくれてるのかな って、

錯覚するような事を言うから。




でも どんなに小さな事でも、

景さんに必要として貰えたら、それで いい。




景さんの曲は全部、″彼女″に向けて作られたもの。


それを分かってて私は…、景さんの側に居る。