「サナー?」




「はい!


何ですか??」






「ちょっと来てー」




「はいっ!


…どうしたんですか、ヒカリさん?」




私が側に行くと、眼鏡を掛けた景さんが目だけを上げた。






「…これ、ちょっと聴いてみてくれる?」




無造作に渡されたのは、ヘッドフォン。






「…失礼します」




手に取って耳に当てたのを確認すると、景さんが手元でボタンを操作した。






…景さんらしいメロディーが、頭の中に流れ込んで来る。




相変わらず、綺麗だけど どこか悲しげな、景さんの音楽。


歌詞を付けずに適当に唄っている声さえも、儚さを演出しているよう だった。