気付いたら

下校時刻はとっくに過ぎていた

空き部屋から出て鞄を持ち

廊下を歩くと、誰もいないはずなのに足音が聞こえる。


向こう側から、こちらに向かって歩いてくる人影


来る、大好きな彼が。


遠くの影がだんだんと近づいてきて


ドキドキと鼓動が早くなった

こんなに遠くにいてもすぐに分かる。


そして、すれ違う時、

ふわりと香る篠の匂いに


抱きしめられた時を感じた


何も話さず、そのまま私の横を通りすぎる


きっと振り返ってはいけない

諦めるならば。