次男は私に封筒を差し出してきた。






「差し当たり、今回入院諸々で使ったお金。」




「……いり、ません。」





絞り出した声は小さく震えて。





私の手を取って乗せようとするのを、首を振って拒否した。





歯を噛み締めたままでは―――もう、声なんて出せずに。




次男は小さく溜息を吐いて「分かった」とそれを収めた。









「おーじろってアレでいて変なトコロお固いよね。」






独り事みたいな呟きを置いて足音は静かに遠ざかっていった。










私はのろりと誰もいない病室に踏み込んだ。



カーテンの開け放たれた窓から差しこんだ陽が白い部屋を物悲しく照らしていた。




まるでこの世に色なんてないみたいに。