「南緒……?」



扉を開けてとっさに目に飛び込んできたのは、知らない男に抱きしめられている南緒の姿だった。



「おまえ……何やってんだよ?」



自分でもビックリするほどの低い声が出た。震える拳をぎゅっと握りしめる。

知らない男が、南緒を抱きしめている。

俺が。尋が。
どれだけ我慢してきたと思ってるんだよ?どれだけ南緒を大切に大切に守ってきたと思ってんだよ。


_____なんでそんなに簡単に触れられるんだよ。




「何って……抱きしめてるんだけど、見てわかんない?」


男は南緒の肩を掴んで少し離し、そう言って口角を持ち上げた。

南緒の背中は動かない。


どうして。なあ南緒、なんで。
なんで抵抗しないんだよ。
なんでそんな簡単に触れされるんだよ。
俺ら以外の男でも、いいって言うのかよ。


「別に幼馴染だからって言う必要もないけど、一応言っとくよ。俺、南緒のことが好きだから」



好き?Love?愛?


何が。
何が何が何が。

俺らは、そんな言葉たち、とっくの昔に捨ててきた。とっくの昔に、南緒への思いを自分の中にしまいこんだ。


8年前のあの日からずっと。