「俺も、一応南緒のこと好きだった男としてアドバイスしたいんだけど、いいかな」
一応南緒のこと好きだった、か。胸がちっとも動かなくて、ごめんね安藤くん。でも、やっぱり私が心動かされるのは、あの2人だけみたいだ。
ていうか、たぶん安藤くんは知ってるんだ。私が明日、自分の気持ちに結論を出すこと。
きっと2人から聞いたんじゃないかな。
あの日以来、何かと2人につっかかられていたし。……2人ももうきっと、安藤くんのことは怒ってない。
だって安藤くんが悪い人じゃないってことは、わかりきってることだもん。
あの時、私のために私を抱きしめたんだって、今ならわかる。あの2人にいつまでもしがみつていたらダメなんだって、教えてくれたのは安藤くんだった。
「好きって気持ちってわかりにくくてたまに間違えるけどさ。
結局のとこ好きって、その人の幸せを願えることなんじゃないかって思うんだ」
安藤くんは、気づいているのかな。
私の中にある、気持ちに。
「これでも俺、好きな子には優しくしたいタイプなんだからね?」
「それはちょっと、信用できないかも」
ハハハッて、笑いが起きる。
安藤くんと、またこうして笑いあえるなんて、思ってもみなかった。
「明日、決めるんだってね。どっちかを選ぶんだよね?」
「……よく知ってるね」
「あの2人、南緒に手を出すなってうるさいからさ。毎日話してるうちに打ち解けちゃったんだよ」
「それは、安藤くんの人柄がいいからだと思うなあ」
「ははっ、やめてよ。2人に殺される」