「お帰り、マイケル!」

「ただいま!」



僕が帰ると、家族はいつも異常な程、歓迎してくれる。
そんな皆の顔を見てたら、都会にいることがなんだか悪いことみたいに思えてくるけど……
だけど、やっぱり都会は面白い。
都会に住み始めてかれこれ一年が経つけど、慣れて来たせいか、最近はなおさら面白いと感じるようになって来てるんだ。
最初の頃は驚きの方が大きくて、あたふたすることばかりだったけど、僕にもようやく余裕が出て来たってことかな。




「マイケル…今年のかぼちゃは特に出来が良いのよ。」

「収穫量も去年よりずっと多いんだ。」



夕食を囲みながら、僕達は他愛ない会話を交わした。

僕の家の農場にはとても広いかぼちゃ畑があって、ハロウィンの時期にはいつも近所にかぼちゃを配るのが習わしだった。
みんな、それを使ってかぼちゃのランタンを作るんだ。

それにしても、食事の時だけはやっぱりこっちが良いなと思う。
一人っきりの食事は簡単なものか、外食だから。
おばあちゃんも母さんも料理はとてもうまいし、みんなで食卓を囲むこの雰囲気はやっぱりどんなに素敵なレストランよりも居心地が良い。



「……あれ?
そういえば、アレクは?」

「さぁ…あの子はしょっちゅう外に出掛けてるから……
そのうち戻って来るわよ。」



アレクっていうのは、飼い猫の名前なんだ。
ビロードみたいになめらかな漆黒の毛色をした猫で、僕がまだ子供だった頃に拾った猫なんだ。
ただ、黒猫っていうのが微妙な問題で…
しかも、僕がアレクを拾ったのがハロウィンだったのがまずかった。
おじいちゃんやおばあちゃんは、アレクを魔女の使いだと言って飼う事を反対した。
僕は、飼ってくれないなら家出をするって大いにごねて……
おじいちゃん達は僕にとても甘かったから、渋々折れて、結局、飼う事を許してもらえたんだけど…不思議なことに、アレクが来てからうちにはなにかと良いことが続いたんだ。
作物の実りが良くなったり、休ませてた土地から温泉が湧き出したり、屋根裏に放置されてたガラクタの中から、お宝がみつかったり……
黒猫っていうのは、不運の使者として考えられたり幸運の使者にとられたりっていう曖昧なものだから、おじいちゃん達はいつしかアレクのことを魔女の使いなんてことは言わなくなり、可愛がってくれるようになったんだ。