(う~ん……)



思いっきり身体を伸ばす。



「おはよう、マイケル。」

「ふみー」



僕に爽やかな朝の挨拶をくれたのは、僕……
って、まだ悪夢は終わってないのか!?



「ふぎゃ、ふぎゃ、ふぎゃ!」

「わかってるよ、トイレだよね。
僕も行きたかったんだ。
さ、庭に行こう!」



僕はそんなことは言ってない!
ま、確かにトイレには行きたいけど……
と、考えている間にも、アレクは僕を抱いてさっさと外へ向かって行く。
そして、彼は木の根元でズボンとパンツを脱ぎ始めて……



「ば、ばかーーーー!
や、やめろーーー!」



と、いう僕の声は、もちろん言葉にはならず、ただぎゃーぎゃー騒いで聞こえるだけで……



「アレク…どうし……
きゃあーーー!!」



僕の声を聞きつけた母さんが窓から顔をのぞかせて、そして、僕ではなく僕の姿をしたアレクの方を見てしまって……







「マイケル、どうしたの?
向こうで何か辛い事でもあったの?」



なんてこった……
母さんの叫び声に、父さんやライアンやおじいちゃん、おばあちゃんが集まって来て、その前でアレクはゆうゆとトイレをすませ、しかも、そのままパンツもはかずに突っ立ってたんだ。
そりゃあ、誰だっておかしいと思うよ……
朝食もそこそこに、みんながアレクの周りを取り囲んで、心配そうにみつめてた。



「辛い事…うん、実は会社でね……」

アレクは僕が愚痴ったことをよく覚えてて、それをまるで自慢話のようにとつとつと話し始めたんだ。



「そうか、そうか…
よく話してくれたな。
マイケル、何も心配する事はないぞ。
おまえには私達がついている。
みんな、おまえのことを愛しているからな。」

父さんはそう言って、アレクを抱き締めた。
母さんは、もう涙ぐんでるし……



大変だ……なんだかものすごく大変な状況だ。



(で、でも、これは夢…なんだよな?
うん、そうに違いない。
そうでなきゃ、こんなこと……)



そう思おうとするけれど、なんだかだんだん自信がなくなってきた。
だって、あまりに現実感があるんだもの。







知り合いのお医者さんが来たり、親戚が来たり……楽しいはずのハロウィンはアレクのせいでめちゃくちゃになってしまって……



そして、結局、僕の姿をしたアレクは心の病だと判断されてしまったんだ。