「春樹?」 嬉しそうに彼女は尋ねる。 あたしは今、憎しみの眼差しで彼女を見つめてはいないだろうか。 「うん。お客様が来るから早く帰って来いだってさ」 「そっか。じゃあそろそろ帰るよ」 組んだ細い脚を解くと、彼女はさっさと玄関へ向かった。 「元気そうでよかった。 またくるね」 「うん、お姉ちゃんも出産頑張って」 よくもまあ、こんな風に笑顔で言えたなと思う自分がいた。