何がいいかな…改めて考えてみると、勝也くんの好みとか分からないんだよなぁ。


そんなことを考えていることが顔に出ていたのだろうか。
勝也くんより少し年上くらいの店員が微笑みながら話しかけてきた。

「お手伝いできることがあったらおっしゃってくださいね」

クリスマスの夜まで仕事なのによくこんな笑顔が作れるなと感心してしまった。
普段ならあんまり店員に話しかけられるのは得意じゃないけど、物腰の柔らかさのせいか自然と自分から相談をしていた。

悩みに悩んで選んだのは時計。
有名ブランドの今シーズンの新しいモデルで、シンプルなデザインが気に入った。銀のベルトにボルドーの文字盤。


「お待たせしました。このような形でお包みしました」

店員が袋の中から綺麗に包まれた箱を取り出した。文字盤と同じボルドーの包み紙に金色のリボン。
いかにもクリスマスといったラッピングに少しだけ照れくささを覚えた。

「ありがとうございます」

「プレゼントのお相手はこの後お会いするんですか?」

「え?」

いきなりそんな事を言われたから間抜けな声が出てしまった。

「あ、ごめんなさい。とても素敵な笑顔で選ばれていたので、こちらも見ていて何だか嬉しくなってしまって…お気になさらないでください」

慌てる店員に思わず吹き出す。
顔に出やすい方じゃないんだけどな~…

「いや、正解です。
彼とクリスマスを過ごすのが初めてなので、楽しみな気持ちが隠しきれてなかったんですね」

彼とあたしの関係性を知らない人にならこんなに素直になれるのが不思議だった。


それを聞くと店員は

「素敵なクリスマスをお過ごしください」

と、素敵な挨拶と笑顔で紙袋を渡した。