………… 仕事を終えて駅の改札を抜けようとした瞬間だった。 「千絵さん」 あたしの名前を呼ぶ低い声のする方を見ると、昨日会った男の子が立っていた。 偶然にしてはあまりにもタイミングが良すぎるのが気掛かりだけど…とりあえず笑顔を作った。 「渡辺くん…こんばんは。 バイトの帰り?」 「はい。 でも…ここで千絵さんが通るのを待ち始めてから、20分くらい経ちますね」 そう言って彼はへらへら笑っていた。 …正直な子。 あまりにも正直だからどうしたら良いのか分からなくなってしまう。