「持ち出し禁止のヤツしかなかった」


レポートの参考資料を探していた隼太は、分厚い本を片手に申し訳なさそうに言った。


「コピーする?」

「うん」

「時間かかるね」

「うん、ごめんな」

「ううん。ちょっとその辺うろうろしてくる」


隼太に手を振ると。

特に目的もなく、ひとけのない書架をぶらぶらと奥へと進んだ。



本棚の向こうで動く人影が見えて、何気なく目をやる。

ぎっしりと並ぶ本の上に出来たわずかなすき間から見える光景に、私は思わず目を奪われていた。


(なんて……美しい人)


本を積んだカートを押す、すらりとした姿。

透き通るような白い肌の質感が、まるで人間じゃないみたい。