拝啓、今ソチラに向かいます

言って女性は車のドアを開けた

「もうすぐ日がくれる。その子をおぶったままで逃げられると思ってんのかしらね」

さすがのアンタでも、その子死なすよ
その言葉に豊は私を初めて振り返った
私を真っ直ぐに見つめて豊は、女性に呟いた

「わかったよ……頼むよ マー 足を怪我させちゃって」

言いながらゆっくりと私を降ろしてくれる
背中から離れようとした時やっぱり痛くて、その背中にすがってしまう

ビクリッとして動かなくなった豊
マー?さんを見るとクスクスと何故か笑っていた

「マー……」

豊はすがるような目で彼女を見ている

「運んで差し上げなさいな」






どうぞと差し出されたティーカップ
中から、漂ってくる匂いは私を落ち着かせてくれる

マー?さんは私に微笑むとりょうちゃん?と呼んだ

「はい」

「豊は、相当貴女に迷惑かけてしまったみたいで」

「いえ、……あの」

「ん?」

「そのっマーさんは、豊のお母さんみたいだなって」

私は、思わず下を俯いてしまった
んーと言ったマーさんはどうかしらねと笑った

「私は豊を雇っているのよ」

「えっ」

意外だった……
こんな綺麗な人が殺し屋の幹部だなんて

でも、豊とマーさんの間に上下関係を感じさせるものがない
まるで、昔から知っているような
そんな感覚

「……マーっていう呼び名は「まーまー」、つまりは中国語でお母さんっていうこと。私の名前はユイリ 私は豊の母親の親友だった」

そう言ってユイリさんはどこか遠い目をした


私と豊の母親
きょうこが出会ったのは……
豊が生まれる三年前

中国から来た私は日本の事なんてあまり知らなくて、アイツの父親を頼りに過ごしていた

そんな私に分け隔てなく
優しい微笑みを浮かべながら言葉を教えてくれた

そんなきょうこの、優しさが私の心には心地よくて
羨ましくて羨ましくて

それから、豊が二人の間に産まれた
やっぱりきょうこはイイ母親だった

仕事をしながら豊を大事に大事に育てて

……あー、そうか
豊生まれて17歳か
早いなぁ

忘れないよ
あの感動は