だから僕は、嘘をつく。
瑠海に続いて祖母にまで、嘘をつく。
「…何もないよ、大丈夫。ちょっとやることがあって。瑠海、よろしくね」
偽りの言葉だと、祖母は勘づいたのだろう。
一層心配そうに歪んだ表情を瞳に焼きつけて、僕は一方的に板戸を閉じた。
もう少し、待っていてくれ。
母親が死を選んだ理由を探すことが僕にとっての親孝行ならば、祖母にその理由を明かすのが母親の親孝行だ。
僕はそれを、必ず成してみせる。
瑠海のため、祖母のため、母親のため、そして自分自身のために――。
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誰もいない空っぽの我が家に帰宅して、すぐ。
ピアノを弾いていた僕の指先をとめるベルが、室内に鳴り響いた。
真依子だ。
祖母の家から帰る途中のタクシーの中で、後藤さんから預かった連絡先に電話をかけた。
彼女は驚く様子など見せず、ごく自然で。
「少し会いたいんだけど」と無愛想に伝えた僕に、「いいわよ。フーガ、聴かせてくれるのなら」と薄く笑いながらそう応えた。
