だから僕は、嘘をつく。

 瑠海に続いて祖母にまで、嘘をつく。



「…何もないよ、大丈夫。ちょっとやることがあって。瑠海、よろしくね」



 偽りの言葉だと、祖母は勘づいたのだろう。

 一層心配そうに歪んだ表情を瞳に焼きつけて、僕は一方的に板戸を閉じた。



 もう少し、待っていてくれ。

 母親が死を選んだ理由を探すことが僕にとっての親孝行ならば、祖母にその理由を明かすのが母親の親孝行だ。

 僕はそれを、必ず成してみせる。

 瑠海のため、祖母のため、母親のため、そして自分自身のために――。



+++



 誰もいない空っぽの我が家に帰宅して、すぐ。

 ピアノを弾いていた僕の指先をとめるベルが、室内に鳴り響いた。



 真依子だ。

 祖母の家から帰る途中のタクシーの中で、後藤さんから預かった連絡先に電話をかけた。

 彼女は驚く様子など見せず、ごく自然で。

「少し会いたいんだけど」と無愛想に伝えた僕に、「いいわよ。フーガ、聴かせてくれるのなら」と薄く笑いながらそう応えた。