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「多分、夜には迎えに来れると思う」

「そうかい。わかったよ」



 灰色の空のパレットに白い雲が混ざりあった、不安定な天気の昼下がり。

 軒先に出た僕は、あがり框で僕を見送る祖母に振り返った。
目 尻に皺を浮かべた優しい笑顔に小さく頷いて板戸を閉めようとすると、「そら」と少し躊躇ったような声で呼び止められる。



「…何?」



 小首を傾げた僕は、じっと祖母を凝視した。


 約三十分のタクシー移動で疲れたのか、瑠海は祖父の仏壇の傍で眠ってしまった。

 家の中や自然に囲まれた辺りは静寂としていて、遠くの方でコンバインが動く音だけが曇り空に吸い込まれるよう響いている。



「…お母さんのことで、何かあったのかい」



 眉間を薄く寄せる祖母。さすが、七十年近く生きているだけはあると思った。

 人間の感情の機微や変化、祖母は僕から放たれる焦燥感に満ちたオーラを感じとったのだろう。



 けれど、出来ることなら巻きこみたくはなかった。

 きっと祖母も自殺の理由を毎日のように思案しているに違いないし、これ以上厄介な悩み事を増やし、体や心の負担にするわけにはいかない。