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「どーして瑠海にはついてないのー?」
きっと、これは今の瑠海の口癖だ。
兄としては一刻も早くその口癖を奪ってやりたいのだけれど、どうやら祖母と暮らしてきた彼女には、まだ男女の体の違いを理解していないらしい。
一緒にお風呂に入ると、瑠海は必ず僕の体を見て不思議そうな顔をする。
そのマヌケな表情はもの凄く可愛いのだけれど、その質問はあまりにも不細工だ。
「…瑠海は女の子だからだよ」
「瑠海も欲しい!」
「僕はやだな。瑠海が男の子になるのは」
「どーしてー?」
「どーしても。ほら、座って。髪、洗うよ」
瑠海がはじめて僕のそれを見て可愛くない反応を示してから、僕はタオルを腰に巻くようにした。
子供を少し、侮っていた。
瑠海は「はあい」と言って素直に黒のマットの上に三角座りする。
やれやれ、そう一息ついた僕はシャワーの栓を捻って彼女の後ろにあぐらをかいた。
これが、最近の僕のバスタイムだ。
瑠海の長く綺麗な髪を、顔にお湯が流れないように注意しながら濡らして。
頭皮に優しい子供用シャンプーを手のひらに出し、彼女の髪に馴染ませたとき、ふと思うのだ。
