自分の世界に入りこみ、ぼうっとする僕に後藤さんは教えてくれた。
真依子は僕の一つ上、22歳で職業はネイリスト。
ふと、伝線の入ったストッキングを触る彼女のライトピンクに染まった美麗な指先を思いだす。
あの妙に高飛車な口振りも、年上だったのなら何となく頷けた。
「彼女の周辺にも聞き込みを始めてみますね。お母様の働く病院や、どこかで接触があったかもしれませんので」
「……よろしくお願いします」
光などとうの昔に失い、氷のように冷たい僕の瞳に、眩しいほどの、それこそ太陽のように笑う後藤さんが映る。
彼はきっと、人気者なのだろう。
上司からも可愛がられて、部下からも慕われて、同僚からも一目置かれて。
僕とは正反対の世界に生きる人間だ。
だから、素直に頼ることを僕は自然と覚えたんだと思う。
碌に調べもしないで捜査を早々に諦めた大人たちとは違う、後藤さんからは内に秘められたような熱いオーラを感じたのだ。
彼がここまで親身に僕ら兄妹に協力してくれる所以はどこにも転がってないけれど、今は頼れる人間には従っておくのが最善だと思った。
「私は最後まで協力しますから。決して原因はなかった、では終わらせませんよ」
個室を出て瑠海を呼びにいくと言った後藤さんは、何かを思いだしたように振り返り熱血を燃やしながらそう言った。
遠ざかっていく背中を見つめながら、僕は小さく息を吐いて少し頬をかいた。
