「お兄、ばいばい!」

「…うん、待っててね。迷惑かけちゃだめだよ」



 今日はポニーテールがいいと言った瑠海は、髪を揺らしながら永瀬さんと廊下を歩いていく。

 ちょっとくらい、僕と離れたくないと縋りついてくれてもいいのに。

 なんて、大人気なく少し拗ねてみる。

 前に訪れたときは確かに気持ち的にも切羽詰まっていたし、あまり瑠海を気にかけてあげられなかったけれど、こうやってすんなり他人に懐かれるのは寂しいものだ。



「そらくん?どうぞ」



 がちゃりとドアノブを捻った後藤さんの窺うような声に、意識をそちらへ戻した。

 数日前も来た個室へ案内され、手探りで電気をつけた彼に続いて中に入る。



 促されるよう革製のソファに腰をおろすと、後藤さんは僕を確認してから向かいのソファに腰かけた。



「…早速ですが、そらくんのお母様と二条さんが接触していたという可能性はありますか?」



 まもなく、後藤さんが口を開いた。



 柳眉を薄く寄せて僕を見つめる眼差しは、真剣そのもの。

 けれど、その質問の内容に頷けるほど母親を知っているわけではなく、否定出来るほど母親を知っているわけでもない。



 僕の心情を読みとってくれたのかは定かではないけれど、後藤さんは小さく頷いてこう続ける。