とたん、僕の足が止まる。



 手を繋いでいた瑠海はぱっと離れた僕の手に驚いた様子で、僕より少し前で立ちどまり振り返った。



「お兄?」



 視界の下の方で、瑠海が小首を傾げるのが見えた。

 けれど、僕の瞳は決して瞠目などすることなく道路の向こう側を淡々と凝視する。



(……探す手間が省けた)



 遊歩道の入り口に立つ見覚えある姿に、ほんの少し僕は安堵した。

 まるで僕たちを待っていたかのようにこちらを見つめて微笑む、真依子の姿があったのだ。



 不安げにもう一度僕の手に縋りついた瑠海の行動に視線を落とすと、薄く口端を緩めて見せてからきはじめた。

 繋がる視線は途切れることを知らず、僕は無機質に、真依子は柔らかく、互いをその瞳に映す。



 背景にある公園の緑に映えるワインレッドのワンピースで華奢な体を着飾った彼女は、目の前で足をとめた僕を涼しげな瞳で見つめた。



「今、そらの家に行こうと思ってたのよ。そしたら、コンビニに入っていく姿を見つけて」



 僕の警戒心を知ってか知らずか、泰然とした態度で語る彼女。

 何も言わない僕に薄く笑いかけたあと、その瞳を僕の隣で黙りこむ瑠海へ落とした。