「瑠海、そろそろ行くよ」



 放っておいたら何時間でもアリの行列を眺めていそうな瑠海に声をかけ、差しだした僕の手をとって立ちあがった彼女と再び歩きだす。

 子供特有の高めの体温が何とも心地よく、冷え切った僕の心を溶かしていくようだった。



 遊歩道を抜けて車通りの少ない道路を渡り、僕がよく利用しているコンビニを訪れた。

 瑠海は僕が持ったカゴを自分で持ちたいと言い、受けとったカゴを手に真っ先にお菓子コーナーへ入る。



「買いにきたのは朝ご飯だよ」

「一個だけ!」



 呆れたように呟いた僕に、瑠海はチョコレート菓子を物色しながら言う。

 こちらへすら振り向かない彼女の頭をポンと叩いて「ひとつだよ」と伝えると、僕は朝食を買うためパン売り場へ回った。



 買い置きしておこうと、惣菜パンと菓子パンを適当にふたつずつ選び、瑠海の元へ戻る。

 彼女は、どちらにしようかふたつのチョコレート菓子で迷っている様子だった。



「…いーよ、どっちも入れて」

「いいの!?」



 隣で屈んだ僕を見て、眉尻をさげていた瑠海がぱっと笑顔を見せる。

 母親や祖母がいれば、甘やかすなと怒られそうだけれど、やっぱりそんなの難しい話だ。

 可愛いのだから、仕方がない。



瑠海の小さな手から受け取ったお菓子をカゴに入れ、レジで会計を済ませてコンビニを出た。