祖母と笑顔で言葉を交わし、自然と馴染む姿は、僕の見たかった普通の光景だった。



 母親の横で少し緊張を滲ませながら笑う恋人を、何だか落ち着かずに見つめる。

 夢にまで見た景色は母親が居なくなったことで一生叶わないものだと思っていたけれど、その夢は思わぬ形で叶ったような気がした。



 恋人と呼ぶにはまだ時間のかかる彼女と、母親の母親である祖母。

 理想の中の景色とは少し違うにしても、僕は時間が止まったかのように戸口に立ち竦んでいた。



「…どうかしたの、そら?」



 誰もが僕の存在に気づかずにいる中、瑠海が真依子を呼んだことでリビングを見て視野を広げた彼女が僕に気がついた。

 途端、ばらばらだった三人の視線が僕に集中する。




「…何もないよ」

「…そう?ならいいんだけれど」



 平然を装ってリビングに入ると、真依子は頷いて瑠海に視線を移した。

 ただ、どうやら祖母には見透かされていたようで、僕を見て含み笑いを浮かべた彼女を冗談半分に睨んでソファへと近寄った。



「はい!何色だと思うー?」

「じゃあ…黄色かしら」

「ぶうー!正解はね、ピンク!」



 選んだ色鉛筆が何色かを当てて貰うゲームを真依子に付き合って貰っている瑠海の隣に腰掛けると、僕はソファにあがっている彼女を抱きあげて膝の上に座らせた。

 突然の出来事に驚く瑠海が振り向き、僕は言う。



「食べ終わったら遊んで貰って。真依子、忙しいでしょ?」



 その言葉に真依子は「大丈夫よ」と口を挟んだけれど、僕はそれを認めず。

 瑠海は僕の真剣な声に素直に注意を受け止め、遊び相手を僕に変更してくれた(仕方なさそうだったのが少し悲しかったけれど)。