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「真依ちゃん!」



 雄司さんを自宅まで送り届け、真依子と共に帰宅した途端、玄関の開く音に瑠海がリビングを飛び出して来た。

 僕が家を出るときは寝癖のあった髪も、しっかりと綺麗なポニーテールにして貰っている。



「瑠海ちゃん、久しぶりね」



 ひらひらと手を振った真依子がフラットシューズを脱いで廊下にあがると、瑠海は待ちきれぬ様子で真依子の手に絡みついた。

 そんな瑠海の頭を撫でた彼女は、瑠海の視線までしゃがみ込んですみれ色のワンピースに触れる。



「可愛いワンピース着てるのね。少しお姉さんに見えるわ」

「本当?」



 真依子が頷くと、瑠海はちらっと僕を見て心底嬉しそうに笑った。

 瑠海が幸せそうで、何よりだ。

 やっぱり、彼女には真依子が必要だった。改めて、気づかされる。



「今日はねぇ、ビーフシチューなの!真依ちゃん、好き?」

「ええ。楽しみだわ」



 瑠海は真依子の言葉に安堵したのか、彼女の手を引いてリビングへ誘導し始めた。

 あ、と僕に振り返った彼女を小さく笑って見送ると、真依子は幸せそうに優しく笑って瑠海とリビングの中へ消えて行った。



 僕は玄関の戸締りをして二階へあがり、携帯を充電器に繋いでテラスに続く窓を閉めて自室を出た。

 騒がしい瑠海の声を聞きながら階段をおりてリビングに入ると、てっきりソファに仲良く座っているものだと思えば座っているのは瑠海だけで、彼女の視線の先には祖母と共にキッチンに立つ真依子の姿があった。