真依子からのお願いを叶えるべく、僕と彼女、そして雄司さんと共に母親の眠る霊園を訪れた。



 彼女からの電話は、雄司さんが無事に退院したという報告だった。

 そして、退院したら一番に行きたいと雄司さんが悲願していたらしい母親のお墓へ連れて行ってくれないか、という頼みを口にしたのだ。



「…ここです」



 誰もが口を閉ざして霊園へ入ってから、最初に言葉を発したのは僕だった。

 ここ最近、張り切って活動しすぎた太陽が休暇を取ったのか、どんよりと曇った空の下、雄司さんは何も言わずに墓石の前に立つ。

 僕はそっと真依子の傍へ近寄り、僕たちは数歩下がって彼の姿を見つめた。



 グレイのカーディガンに黒のスラックス姿の雄司さんは、持って来た小振りの菊の花束を供え、静かにその場にしゃがみ込む。

 しばらく墓石を黙視したあと、そっと手を合わせて、約二ヶ月振りの母親との残酷な対面を終えた。



「まだ、嘘みたいだ」



 立ちあがり僕らへ振り向いた雄司さんは、ひだまりの如く柔らかな笑顔を浮かべてそう呟いた。

 名残惜しそうに再び墓石へ振り返る姿は、父親の墓参りへ初めて訪れた日の母親を見ているようで、胸がぐっと締めつけられる。



「…あたしも……いいかしら」



 ぽつり、真依子が呟いた。



 その声はまるで、叱られることを覚悟している子どものように弱々しく僕の耳に届く。

 墓石へ振り返っていた雄司さんの視線がこちらへ戻り、彼の複雑そうな瞳を見て見ぬ振りをして僕は答えた。