「…子どものこと、話しても大丈夫かしら」

「…今だからこそ話すのもいいと思うよ。赤ちゃんが、生きる意味になってくれるかもしれない」



 ちらりと雄司さんを見遣った真依子の言葉に、僕も彼に視線を向ける。



 昨日初めて会ったけれど、短時間で雄司さんの人間性が少しわかった気がした。

 優しさは第一印象から変わらずだったけれど、真依子が言った通り、人を殴ったりなんてする人じゃないのは一目瞭然だったし、弱々しくありながらも彼女を祝福してあげられるような人じゃないかと思った。



「そうね…言うわ。そらは…来る?」



 僕は、迷わず頷いた。



 先ほど雄司さんの病室の前では、一切僕を会話に参加させようとはしていなかった真依子。

 自分で全て伝えるんだと決意していたはずなのに、彼女は初めて僕を連れようとした。

 きっと、少し不安になったんだろう。

 断る理由なんて、どこにもなかった。



 ベンチに凭れて軽く頭を項垂れる雄司さんにふたりで近づくと、彼は足音に気がついて重たそうに顔をあげる。

 そして、妙な空気感を察してか僕と真依子を窺うように見比べた。



「…パパ、あたし、妊娠したの」



 多才な彼女だ、何か的確な前置きでもしてから伝えるのかと思えば、僕も驚くほどストレートに妊娠を告げた。

 雄司さんも頭の片隅にもなかったその告白に、わかりやすく瞠目する。