「そらくん、お帰りなさい。大丈夫でしたか?」



 短い黒髪を後ろでひとつに纏めた葉月さんは、片手にゴミ袋を持っていた。

 瑠海がいる手前、警察署の名を出さずに僕を気遣ってくれた彼女に小さく頷き返し、瑠海を抱いてリビングへ向かう。



 葉月さんはその際、金庫を取って来ると言って物置のある裏庭へ赴くため廊下を歩いて行った。



「これ、出て来たの?」



 リビングに入り、視界が捉えたのはテーブルの上に広がるシルバニアファミリーの家や人形、小物たち。

 思わず瑠海に聞くと、彼女は頷き僕の手を引いてそこへ近寄る。



「お兄は、これ!」

「犬?」

「そう!ここ、お兄と同じ色だから!」



 シングルベッドに寝かされた犬の人形を取り、瑠海はベージュの耳を示して楽しそうに笑った。

 着せられた白いシャツは、彼女から見た僕のイメージらしい。



(確かによく着てるけど…)



 瑠海に差し出された人形を見つめながらそんなことを考えていれば、背後でリビングのドアが開いた。

 瑠海はシルバニアファミリーに夢中で、僕だけが振り返ると葉月さんはゴールドの煌びやかな姿をした金庫を抱えていた。