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 葉月さんからの着信。

 僕は、少しも動揺しなかった。



 きっと、特に対したものは出て来ないと確信していたからだ。

『物置を整理していたら、オモチャの金庫が出て来ました』

 瑠海は自分のものではないと言い、葉月さんは一応知らせておこうと僕に連絡したらしい。

 そういえばそんなものを買って貰った記憶が、片隅にあった。

 消えかかり、ほとんど透明だった記憶にほんのりと色がついて、懐かしさを覚える。



 葉月さんには恥ずかしくて話さなかったけれど、僕が幼稚園生の頃、わがままで両親を困らせて買って貰った安物の金庫。

 あの頃、祖父の家にあった本物の金庫に目を奪われて両親に何度も強請った。

 今思えば、金庫が欲しいだなんてとんでもなく生意気な子供だ。



「お兄おかえり!」



 玄関の扉を開けると、音に反応したのか瑠海がリビングを飛び出してきた。

 その手には、シルバニアファミリーの小さな猫の人形が握られている。



「いい子にしてた?」

「してた!」



 僕の手を掴む瑠海に訊ねると、彼女はにっと無邪気に笑って大きく頷く。

 そっかと頷いて瑠海の頭を撫でていると、リビングの向かいにある母親の部屋から葉月さんが顔が出した。