手慣れたようにアニメのDVDをセットした瑠海が、彼女にとっては大きなリモコンを手に僕の隣へ戻ってきた。

 まもなくオープニングのポップな曲が流れはじめると、握りしめていた携帯が震えた。



 ちらりと手許へ視線を落とすと、メールを知らせるランプが点滅している。



「お兄、光ってるよー?」



 手許を凝視している僕の顔を覗きこんだ瑠海のきょとんとした顔にはっとして、僕は取り繕うよう微笑む。



「真依子かな」

「何時に来てくれるかなぁ」



 携帯を触る僕の横で呟かれた瑠海の声はどこか遠くで聞こえているようで、僕は少し眩しい画面を見つめる。

 開いたメールの本文には、こう書かれていた。



【お昼過ぎになるけれど、瑠海ちゃんに会いに行くわ。

それから、この間話したことだけど、あたしは大丈夫よ。きっとあなたの中でも色んな葛藤があるでしょうから、待つわ。

瑠海ちゃんの前ではいつも通り、無愛想だけど優しい兄でいてね。じゃあ、また後で(^_^)】



 文末で笑う顔文字をじっと見つめ、僕は瑠海に気づかれないように小さく息を吐く。

 ただ端正に並ぶ活字だけでは本心かどうかなんてわからないけれど、彼女なりの気遣いは痛いくらい伝わった。