「もう、いいじゃん、オレにしときなよ」 あたし、29歳、町田朱莉(マチダ アカリ)にむかって、 桐下 聡 はつぶやいた。 ぼろぼろに疲れた金曜の夜。 幼馴染の聡は目の前で、カクテルグラスをもてあそんでいる。 「はあ?何?素性も分かってて性格も分かってて、 収入そこそこ、ルックスそこそこのあんたで、 ここらで手を打てと?」 あたしは、二杯目のソルティードッグをくっとあおって、 聡にくだをまく。 一人で何とか食べていける収入と、 聡未満の普通のルックス。 ただ、夢見ることは忘れてない。