「あっ!」

私は回想から戻った。

「出ていらっしゃい。学校、始まるわよ。」
「うん…。」

私はそうっと部屋を出た。

「お姉ちゃん!早く準備しないと、遅刻するよ!」
「うん。」

制服に着替えて、パンを口にくわえる。

「いってきます。」
「いってらっしゃい。気をつけてね。」
「うん。」

ダッシュで学園に向かう。

「あ!万里ちゃん!こっちだよ。」

友達の美香ちゃんが言った。

「何?」
「この前話した、超モテモテの女子ヤンキー様よ!」
「え…。」

女子、ヤンキー…。

「今日やっと来たみたいなの!あっちよ」

美香ちゃんが騒いでいる。珍しい。
私はその女子ヤンキーを見た。

「え…?」
「カッコいい~❤ ね、超美人でしょ?やっぱ、モテ女は違うわ!」

どこかで、見たことがある。まさか…。

あの、女子ヤンキー『ひかり』?

「ひかり様、カッコいいな~❤」

近くにいた女の子が言った。

「ひかり…様?」

私はつぶやいた。

「そうよ!最強ヤンキー、松葉ひかり様よ!」

…まさか、本当に?

嘘。

フラッ…

目まいがした。

グッと、誰かに掴まれた。

「きゃあ!?ひ、ひかり様じゃん!万里いいな~!」

え?

「ひかり様…?」

「大丈夫なのか?危ないから保健室に行くぞ…。」

ひかり様がエスコートしてくれた。
ついて来ようとした女子を、ひかり様が睨みつけて止めた。
すごい。

「ありがとうございます。」

保健室への途中、ひかり様に言った。

「別に。当たり前だろ。困ってる人がいたら助けるってのは。」

優しい…。

そう思いかけた途端、私は、ハッとした。

この人は瞬を殺した人間。許すことなど、してはいけない。
深く関わるな。

「もうここまででいいです。ありがとうございました。」

私はひかり様から離れた。

エスコートってのも、おかしい。ヤンキーのすること…、いや、女子のすることではない。

「いや、いい。」

ひかり様は、そう言って私の肩を引き寄せた。

「俺が、最後まで責任とって面倒見る。」

抵抗はできなかった。

ひかり様が怖かったのも少しはある。

でも。

一番の理由は…

ひかり様を呼ぼうとしたときに気づいた。

瞬の名字も…

松葉だ。