大っ嫌い。

お母さんもお父さんも麻衣も。もう嫌。
でも、わかってるの。私が一番嫌っているのは、こんな自分自身なんだって。

「お姉ちゃん。ま~いだよっ!開けてよ!」
「嫌だよ。入ってこないで。」
「お姉ちゃん…。」

悲しそうに麻衣は言った。
ごめん。麻衣。

「万里?開けてよ。万里?」

今度はお母さんが来た。

「お母さん…。」
「万里の辛さはお母さんもわかるわ。お母さんも…、同じだから。」
「同…じ…?」
「ええ、そうよ。お母さんも昔、大事な人を失ったことがあるの。そこで、お父さんと出会ったのよ。」

そう。私がこんなことになったのは、あの最低最悪な女子ヤンキーのせいだ。

1週間前…

『瞬!行くよ!もぉ…、瞬ってば…』

瞬は私の彼氏だった。自慢の。カッコよくて、勉強もスポーツも完璧だった。

『万里。』

急に瞬に呼ばれた。

『何?』
『俺に何かあったら…すぐに逃げるんだぞ。』
『え…』

それからの遊園地デート、幸せだった。
瞬と離れ離れになると思って、精一杯、楽しんだ。

『万里。ありがとう。今日は、本当に楽しかった。最高の思い出になったな。』
『うん。最高。』
『帰るか…』

そう言って歩き出した瞬のパーカーの裾を、私はきゅっと握った。

『万里?』
『嫌。』

私はうつむいてそうつぶやいた。

『思い出作りに、プリ、撮ろうよ。』
『…万里…』

そう言うと瞬は、私を抱き寄せた。

『すまない…すまない。万里…』
『瞬、早くしないと、お母さんに怒られちゃう。』
『ああ…、そうだな。』

私たちはゲームセンターに着いた。
私はプリの機械を探す。

『あ、瞬。あの機械にしよう!』
『うん。』

瞬は優しく微笑んだ。

『万里!』

瞬が叫んだ。

グサッ

え…?

『きゃああああー!だ、誰か、救急車を呼んで!』
『あいつを捕まえろ!』

ゲームセンターの客が騒いだ。

『静かにしろ。』

グレーのパーカーのフードを深く被った犯人が言った。

『俺は女子ヤンのひかりって奴だ。以後、お見知りおきを。』

そう言ってにやりと笑った口が、私を震わせた。

『待ちなさいよ…!なんで、瞬を…』

勇気を出して聞いた。

『別に。イチャイチャしてたからムカついただけ。運が悪かったのさ。』

…頭が、真っ白になった。