結局、あなたしか。

あ。

廣瀬太一。

一人で難しそうな厚い本を読んでいる。

友達いないのかななんて
不覚にも一瞬心配した。

あの人のことはどうでも良いんだった…

佐倉は、とはたと思い振り向くと
彼氏といちゃいちゃしていて
私の居場所はなさそうだった。

仕方なく適当な椅子に腰掛けて
ぼーっとしてみる。

後ろでは
「ゆりりん」「たっくん」とうるさい。
ちなみにゆりりんとは
佐倉の名前、由里のあだ名だ。


ぐるーっと教室を見渡す。

…え、廣瀬くんがこっち見てる。

なんで、近付いてきてる…

うろたえていると、
彼は私のセミロングの髪を触り、
「ご飯粒。ついてたよ」
と独特の低めの声で言った。

『えっあっ…!
ごめん、ありがとう…』

咄嗟のことで、小さい声しか出ない。

視力良いんだなぁとか
どうでも良いことを思った。