不意に彼が僕の右手を取った。
「な、なに?」
「俺、柳瀬の隣を誰かに譲るつもりないから。」
「……え?」
「柳瀬は隣に俺が居なくても、寂しくない?」
例えば根雪のように、想いも降り積もっていけば……
「寂しいって言ってくれよ。」
消えてなくならずに済むのだろうか。
彼の手がさらに強く、僕の手を握った。
その彼の手が震えていたのは寒さのせい……?
それとも………。
いつも自信ありげな表情が、今はどこか不安そうで。
だけどその目は僕を見つめて離さない。
「……寂しいよ。」
声は小さかったけれど、彼にはしっかり聞こえていたみたい。
いつもの笑顔に戻ったから。


