「――柳瀬、」 彼が僕の名前を呼ぶとき、その声音はとても優しい。 「受験終わったらさ、どこかに旅行しよう。」 「どこか?」 「どこか遠いところ。」 楽しげに彼は笑う。 そしておもむろに僕との距離を縮めてくる。 「……なに?」 「寒いから。くっついた方が暖かいだろ。」 肩と肩がぶつかる。 痛むのは僕の胸。 辛いな………。 叶わない、 届かない、 こんな想いは…… この雪と一緒に消えて ――なくなってしまえばいい。