――雪が降った。 この街に何年振りかの雪が降った。 「あ、雪だ。」 隣を歩く彼は目を輝かせて、空を仰いだ。 僕は首に巻いたマフラーに顔を埋めて、そんな彼を見つめた。 「柳瀬(ヤナセ)、雪だ!」 「ちゃんと見えてるよ。」 「なんだよ、反応薄いなー」 彼は口を尖らせ、それでもまた空を仰ぎ、微笑んだ。 「根雪になんないかな。」 「無理だよ。すぐ消えてなくなる。」 彼が掬うように差し出した手に雪が舞い、それはすぐに消えていった。 「残念………」 この降りしきる雪は、どこか僕の心のようだった。