今のとこはまだその話は上手く誤魔化せてるらしいけど、いつ答えを求められるかはわからない。 前に一度、お父さんは一応と言ってあたしに聞いてきた。「田原の跡継ぎになりたい?」と。 もちろんあたしは当たり前に「なりたくない」と答える。 だってあたしは、"邑楽千夏"だもん。"田原千夏"では、ない。 そう言ったら大好きなお父さんは優しく微笑み、あたしの頭を撫でてくれた。 この話のことなんてこの後綺麗さっぱり忘れて、ずっと記憶の奥底に眠っていたんだ。