その後。あたしは何も知らされないまま、お父さんに見知らぬ土地へと連れていかれたのだ。
やっと連れていかれた理由がわかったのは、10歳の時
なんとあたしは、お母さんの実家・田原家の跡継ぎになっていたみたいだ。
いつのまに、って感じなんだけれど。
その時はただただ唖然とするしかなかった。
田原家は、一言で言えば超お金持ち。
現在田原の当主は、お母さんのお兄さん、あたしから見れば叔父さんの田原疾風さん。
田原が持っている会社の社長も勤めている。
普通ならば疾風さんの子供が田原家の跡継ぎになるらしいんだけど、疾風さんは過去に何かあったらしく、結婚すらしていない。
本人もこれから結婚する気はさらさらないらしい。
二人兄弟だったお母さんと疾風さん。
困った田原家は、お母さんの子供を次の田原の跡継ぎにすることに。
そこで生まれたのがあたしだったらしく、父によれば邑楽家長女であるあたしが次の田原家当主候補なんだという。
なんて迷惑な話なんだ。
この話を田原の会長・田原千晶さん、あたしのお祖母ちゃんから聞いたお父さんとお母さんは、どうしてもあたしを跡継ぎにさせたくなかったらしい。
二人で相談して、お父さんはあたしを連れて田原から逃げようとしたらしいのだ。
