次の日、エヴァは行ってしまった。

陽が昇ってから間もなく、もう一度ニコラスに合わせる暇もなく言ってしまったのだ。

ニコラスは、自室でエヴァがくれた人形を見つめる。

これを彼女だと思ってくれ、とエヴァは言ったものの、やはり本物には敵わない。

ため息をつきながら、ニコラスは放出できない愛情を腹の中で渦巻かせることしかできない。


「エヴァ…」


愛しき人の名前を呼ぶ。しかし幾ら呼んでも彼女はもうここにはいない。

会いたい。今、彼の中にある望みはそれだけだった。

エヴァに、会いたい。

ニコラスは心でそう呟く。

しかしエヴァを思う気持ちが強くなればなるほど、彼の絶望も増していった。