約束の別れの日の前日、何か大きめのものをシーツにくるんでエヴァは建物から出てきた。

慎重そうに、持ちながらニコラスのもとへ駆け寄る。


「よかった、ちゃんといたのね」

「…明日、だろう? まだ通っていたのかい?」

「あの子たちにも別れを告げなきゃ…。それに、これもあるの」


そう言って彼女はその荷物のシーツをとった。

荷物の正体は、少し大きめの綺麗なビスクドールだった。


「気休めにしかならないと思うけど…ちゃんと私に似るように作ったのよ」


エヴァの言った通り、そのビスクドールはまっすぐなブロンドの髪を持ち、サファイアのように青いガラス玉が目に埋め込まれていた。


「私だと思って、これを持って待ってて…?」

「エヴァ…」

「そしたら…きっと寂しくないと思うから…」


泣きそうな声になってきたエヴァをニコラスは抱きしめてやった。

しばらく嗚咽を上げた後、エヴァは突き放すようにニコラスから離れ、走り去って行った。