【短】真紅のドレス

ぼんやりとした乳白色の世界で、ニコラスはふわふわと一人で浮いていた。

意識がはっきりしてないのか、ぼーっとしていて動かない。

突如、彼の目の前の空間が歪んだ。

コーヒーに入れたミルクをかき混ぜた時のような縦長の波は、どんどんと形を定めていき、エヴァの姿が造られた。

ブロンドの髪、サファイアのような瞳。

ニコラスが、はっと目を見開く。

なんせ愛する『人』が夢に出てきたのだから、それは驚くことだろう。

驚きを隠せない眼差しでエヴァを見つめていると、彼女の口が動いた。


「ニコラス」


名前を、呼んだのだった。

眠りにつく前までは人形だったはずのエヴァが、喋ったのだ。


「エヴァ…喋れるのかい?」

「…あなたが、ずっと思ってくれていたから。あなたの夢の中でだけ、こうしていられるのよ」

「エヴァ…」


ニコラスは、喜悦を隠せないでいる。

するとエヴァは彼に近づき、彼をそっと抱きしめた。


「ずっと…こうしたかったの…」


ニコラスは彼女を抱き返す。


「エヴァ、愛してるよ」

「私もあなたを愛してるわ、ニコラス」


エヴァは顔を上げ、二人は見つめ合う。

ニコラスはいつものように、彼女の髪を撫でる。


「この髪も…肌も、瞳も…すごく綺麗だよ…。愛してる…」


エヴァは優しい笑みで返事をした。

幸せだ。

ニコラスは感じた。心が嬉しさで満たされるこの感覚。

ニコラスは、もう一回エヴァを優しく抱きよせた。