「おーやっぱり一ノ瀬はミステリー小説なんだな。さすがミステリー小説作家。」

゛作家゛?!!

コイツが作家‥。

それも清野 あおぞら先生だなんて。

私の読んでる小説を書いてる人なのか。

とても敗北感を感じる。
「あー、うざい!!」

私は自分でもビックリするくらいの声を出した。

その場にいることが恥ずかしくて、保健室に逃げることにした。

なんでだろう。

あれは悔しさだけじゃない。

"惚れた?"

違う。

"既に好き?"

違う。

"ただの才能への憧れ"なのだろうか。

そうしておきたい。

でも、一ノ瀬のこと、正直もっと知りたい。

これは"恋"だった。
でも"認めたくない"。


人を好きになることは無駄なことなのだと、頑なに塞いでいたから。


今更、一ノ瀬に恋をしたって、私じゃ叶わない。


いつの間にか授業が終わるチャイムが鳴っていた。

「亜弥ー。あのね、さっきの好きな人の話なんだけどー。私も言って無いじゃん?だから‥言おうと思って。」

麻乃が私の顔をのぞき込む。


「私ね‥蒼空くんのことが好き。」