あの後、俺は駅に向かったが、よく考えたらあれから一時間以上経っていることを思い出した。

「はっ!そうだ!携帯携帯!」

携帯の存在を思い出し、ポケットから携帯を取り出す。
そして、千鶴へと電話をかけた。

プルルル…プルルル…

電子音だけが鳴り響く。

「出てくれ…!」

悲痛の叫びが出た。
しかし、出る気配が無い。
気付いていないのか…もしくは…

「嫌われた…?」

嫌な汗が流れてくる。

いやいやいやいや、そんなことはない!
気づかないだけだ!

もう一度携帯を鳴らす。
が、やっぱり出ない。

「くそっ!」

俺は乱暴に携帯を閉じた。

「携帯がダメなら、…家に行こう…!」

俺は、そう思い立つと、千鶴の家の方向に向きを変え、走り出した。