男は、無言で右手をこちらに見せた。 開かれた手のひらには大きな切り傷。 手のひらを横断するように、親指と人差し指の間から手のひらの左側面までが傷つけられていた。 もう血は止まっていたが、それでもかなり痛々しい。 救急箱の中から消毒液とガーゼを取り出して、その傷を消毒する。 消毒しながら、先ほどからずっと疑問に思ってたことを口にしてみた。 『なんでこんなことに…?』