PM8:00

チン、とオーブンが音を立てた。

『でーきたっ』

オーブンを開けると、チョコレートの甘い香りが湯気とともに私の顔にまとわりつく。

目を閉じて、心ゆくまでチョコレートの香りを堪能したあと、ミトンをつけた両手で、チョコレートケーキをオーブンから出した。

ちょっと二人分には足りないけど、いいよね、

皿の上でケーキを二等分し、一つは出しておいたもう一つの皿に移し替えてから冷蔵庫にいれる。

さて、ご飯だ。

「みゃーん…」

いつの間にマグロを食べ終わったのか、なんとも刹那げな声で、猫が私のチョコレートケーキを覗き込んだ。

“ちょーだい”

ぴょんぴょんと二足で飛び跳ねながら、チョコレートケーキの皿をとろうとしている。

『…猫ってチョコレート食べていいんだっけ?』